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こだわり人
[2021.01.12]
品質を制するものが時代を制する。ものづくりスガツネ工業の底力とこれから/スガツネ工業(株)
"ものづくり日本、万歳"。このコラム『こだわり人』も早いものだ。平成24年(2012)から始まって早くも9年。連載掲載も95回を迎えることができた。短くもあり、長くもありというのが正直な実感としてあるが改めて、これまでご登場いただいたこだわり人にお礼申し上げると共に、長きに渡ってご愛読いただいた方々に謹んでお礼申し上げる次第です。ありがとうございます。
今回を以て、本コラムは一旦幕を下ろさせていただきます。創業以来、ものづくり企業を標榜するスガツネ工業の熱い志を伝えると共に、ものづくり日本の多様な動きを身近に受け止め、共に享受していこうという思いからスタートさせていただいてきましたが、その役割に封をすると共に、新型コロナウイルス問題などによって起きた企業の経営基盤の見直しや広報活動の多様な展開―ひいては未来を見据えた企業の新基軸が問われる現在、新たな事業観、未来観を構築していかなければならない思いです。もちろん、これは私どもの企業だけの問題ではなく、全世界的な問題で、商業資本主義に支えられているこの国の未来を思うと、ものづくりに特化したスガツネ工業の最重要課題でもあるということであるのです。言葉を変えると、コロナ時代に立ち止まらず、行き先を見つめ、これからもお客様と共に生き残っていこうという呼びかけであり、その実践であるということである。
そこで今回は、本コラムの最終回ということで、ものづくりスガツネ工業の原点である"商品の品質管理"ということに焦点を合わせて、その基盤と実践について紹介させていただきたいと思う。
【最終回】品質を制するものが時代を制する。
ものづくりスガツネ工業の底力とこれから
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)
●3万点以上の心の原点。
ものづくり日本。世に言う品質管理こそがものづくり企業の最大のテーマではないだろうか。世界の企業史を見ても明らかのように、ものづくり企業のすべてがここに主眼を置いている。もちろん、スガツネ工業も創業以来のすべてをここからの出発点としている。商品の品数3万点以上という現在の多様な製品ラインアップを考えると、やはり製品の品質管理を徹底させ、すべてを見える化で総合的に管理していくことが重要なことである。
現在、スガツネ工業の品質管理の主軸は品質保証部がその役割を担っている。3万点以上もある多彩な製品群を一手に引き受けて、製品の品揃えはもとより製品1点1点の品質の維持、確保、促進、管理にこだわり、品質管理体制を確立している。多くのお客様から、「とにかくスガツネはすごい、見習うべきことが多くある」とよく言われるが、その体制、陣形は「こだわりのある製品を広くお客様に届ける関所だ」と称賛を浴びている。こだわりのあるLAMPなどのブランド品をはじめ国内購入品、さらにスガツネ工業が扱う世界中の輸入品のすべてはこの部門がGOサインを出さないと御法度ということである。

現在、その長に立つのがこの分野の川鍋氏である。自ら現場の最前線に立って品質管理の重要性を説き実践しているが、スガツネ工業の品質管理の哲学といったことに徹底的にこだわっている。まさにスガツネ工業の鉄壁の守護人という勢いであるが、そのあふれる思いを最初に紹介させていただこう。
「品質管理こそスガツネ工業のすべての出発点であり、行動の原点です。そのため、とにもかくにもお客様の多様な声に耳を傾け、納得感のある製品を届けるよう邁進しています。特に近年はお客様のご要望に応えてどんどん品数が膨れ上がっていますので、品質管理が非常に難しくなり、きめ細かな対応が不可欠になっていますが、それをするのが私どもの使命であり、真骨頂です。製品に支障や欠陥があれば大問題でお客様にも迷惑かけてしまいますし、会社にとっても大きなイメージダウンになります。そのため、問題を未然に防げるように製品ごとの品質基準を明確にして品質管理体制を確立しています。」
●微に入り細に入りの大局観

確かに品質管理のこだわりは徹底している。だがそれによって生産コストなどがアップということになれば本末転倒なので、あくまでもお客様にも納得いただけるような展開を講じている。特に市場トレンドに沿った、あるいはまだ日本では珍しい輸入品は管理が難しく手間がかかるのだが、これも盤石の体制を確立している。仮に品質に支障があると距離の問題や言葉の問題から対応にずいぶん骨が折れるのだが、安定供給という観点から受け入れ検査体制を軌道に乗せている。 輸入品や国内購入品は、問題が発生した時だけではなく、常日頃から取引企業や協力工場の経営や製品事情、製品取り扱いに全神経を使っている。また、定期的に企業や工場訪問など現場の方と直接に情報交換したり、生産ライン見学したりして、あくまでも一体感のある製品提供に撤している。ともすればスガツネ工業は商社的機能が多いと見られがちだが、品質基準は勿論メーカー目線で対応している。例えば、購入先の製品価値はもとより、経営や方向性にスガツネ工業と違いがあるかなどを比較、分析などを行っているのだ。

そこにあるのは、無論あら捜しといったことではなく、あくまでも良いもの、納得できるものをお互いに追求していこう、提供していこうという大局感である。また必要に応じて日本市場に合わせ、メーカーとは別に日本語のカタログ、取付説明書、動画などを独自で用意したりと余念がない。
●品質管理こそ企業の品格を創る。
ではここで、スガツネ工業のこだわりの総本山本ともいうべき品質保証のこだわりについてもう少し紹介しておこう。先の川鍋氏はその狙いについて次のように語っている。
「トラブルが起こってから、ではなく未然に防ぐために先手、先手の取り扱いに留意しています。具体的には、品質管理の工程表を作成して関連部署や協力工場と緊密なコミュニケーション活動を行っています。例えば日本と海外は電圧が違いますが、生産ラインが海外の場合は日本と電圧の安定度合が異なる場合があるため予め予測し、生産に必要な条件が整っているのか、といった細かい部分まで確認します。微妙な認識のギャップ、確認不足からくるトラブル防止に努めています。」

至れり尽くせり。多様な品質管理を徹底させるためにさまざまな施策を展開しているスガツネ工業は、名前こそ大手企業のそれのように世の中の一般消費者には知られていないものの、住宅やホテル、商業施設などの建築物件や、医療、鉄道、食品機械、半導体や物流などのそれぞれの業界の縁の下の力持ちとして、大役を担っている自負を持ち社員は皆が皆、燃えたぐっている。ボクは、品質とはただ単に製品の良さなのではなく、その製品を世に送り出すために関係した人間の質でもあると考える。人間の質、つまりスガツネで働く一人ひとりが、それぞれ与えられた役割の中で最大限のこだわりとパフォーマンスを出し、スガツネの品質を創っているのだ。
スガツネ工業のこだわりの神髄について、最後に僭越ながらボクのスガツネ工業に対する思い・エールを紹介させてもらい、本コラムの幕を閉じさせていただこう。いや次代への幕開宣言ともいうべきものである。
次代に向かって一致団結、Go and Go!スガツネ工業創業以来の心には1点の曇りも許されません。全社員、関連部門、関連会社が一体となって、また国をあげての品質管理にこだわっている。言葉を変えると、このマインドがお客様とスガツネ工業を一つにつなぐ財産だと思います。品質管理の心こそ、企業永遠のシンボル。いま、新型コロナウイルス問題などで世の中、何かとあわただしいが、この精神こそ、企業の未来にかかっているのではないだろうか。これからもここに力点を置いて、未来を描いていってほしい一心です。まさに、品質こそが企業の品格を創る礎なのだから。
文 : 坂口 利彦 氏
こだわり人[2020.12.07]
ものづくりスガツネの生き字引。フラッグシップブランド『Zwei L』/スガツネ工業(東京・千代田区)
心のウキウキはもう戻ってこないのだろうか。新型コロナウイルス問題以降の経済の先行きなどを思うと、改めて考えさせられる。政治や経済学者の市況などのコメントを聞いていると、ついつい暗くなってしまう。コロナによる落ち込みは深刻で、晴れの日はいつかやってくるのだろうか、余談は許さないということなのだろう。ものづくり日本、どこに行くかだ。

思えば、ものづくりのスガツネ工業は今から約20年前、2000年代初めごろ、一つの歴史的エポックに遭遇した。言葉を変えると、スガツネ工業にとってその後のスガツネブランドに加速度を与える重要な判断になった製品があるのだ。2000年といえば、世界中の企業は『2000年』という新しい年号に乗って事業の見直しや新たな商品づくりに踏み出した熱気にあふれた時代だった。スガツネ工業もその流れに先立ってトップの菅佐原氏自らが先頭に立って新しい製品の開発に踏み出したのである。それが今日のスガツネ工業のフラッグシップブランドとなっている『Zwei L(ツヴァイル)』という輝きのある製品である。当時の様子を製品化に携わった仕入部 鈴木氏、技術設計部 佐藤氏は感慨を込めて次のように話しているが、まさにものづくりスガツネ工業の屋台骨を支える今日の重要な製品になったのだ、と感じざるを得ない。それでは今回は『Zwei L』というこだわりの商品にスポットライトを当てて、その多様な魅力を紹介させていただこう。

ものづくりスガツネの生き字引。
スガツネフラッグシップブランド『Zwei L』
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)

鈴木:「Zwei Lの始まりは2000年初頭です。ものづくりのスガツネ工業の事業マインドを込めた製品を創ろうということで構想がスタートしました。私ども金物メーカーとしてのノウハウを生かして我が社の顔となる製品づくりに取り組んだのです。そして2年の構想を経て2003年に東京・日比谷の国際フォーラムで開催したプライベートショーで初披露させていただいたのですが、その存在感は見事に開花して、展示した10品目の前には多くのお客様が集まっていました。製品のラインアップはもとより、製品のコンセプトを多くの来場者や業界関係者の方に説明させていただき、そして共感していただきました。従来の考え方を飛び出し、「トータルコーディネート」といったコンセプトにレバーハンドル、丁番、戸当りなどの建築金物・家具金物をラインアップしたことが受け入れられたんですね。例えばバスルームのガラスドアのハンドルや丁番、戸当り、さらにはタオル掛けやフック、スイッチコンセントプレートなどに至る細部までZwei Lでトータルコーディネートすることで、空間に統一感を持たせ、その空間の価値を上げることができます。」

佐藤:「『Zwei L』という製品名に込めた製品コンセプトをしっかりと定着させるため、また日常生活での使用感を考慮し、標準化を基準とした設計を採用しています。すべてのZwei L製品は黄金比率<1:1.618>からインスパイアを受け、美しい相似形をデザインに落とし込んでいます。そのデザイン・仕上げの美しさは日本が誇る技術の賜物として、国際舞台でも十分なポテンシャルがあると考え、近年は欧米をはじめとした展示会での展示も活発化しています。
また細かい話ですが、社内では『Zwei Lブルー』と呼んでいますが、Zwei Lはブランディングとして使用できる色もしっかり指定されています。もともと弊社のコーポレートカラーには青色があるのですが、これに高級感、ロイヤル感を出すために少し紫がかった色をZwei Lブルーとして選定しました。これも数あるカラーサンプルの中から、菅佐原をはじめ関係者で何度も何度も話し合い、今の色へと落ち着きました。」
●スガツネ史上に燦然と輝く「2つの光」。
スガツネ工業の歴史的所産というべきZwei Lはスガツネ工業独自の技術の集大成である。Zwei Lは『2つの光』という意味を持ち、その輝きのある存在感がこだわりのスガツネ工業の生き字引になっていることをご存知だろうか。ショールームや展示会などでいつも多くのお客様を魅了しているが、今一度、その製品コンセプトを紹介させていただこう。繰り返しになるがZwei Lは『2つの光』という意味を持つ、スガツネの造語である。ドイツ語のZwei(2つ) Lichter(光)から由来し、高精度な2つの磨きが生み出す、芸術的な光を示している。澄んだ湖水の深淵を思わせるミラーの輝き、上質のシルク糸を紡いだように艶やかなサテン仕上げ。『Z』は究極を意味し、『L』は光と共にのスガツネ工業の『LAMP』を示唆するフラッグシップブランドである。言葉を変えると、究極の2つの仕上げを徹底的に追求して、さまざまな着地点をクリアした製品であるということである。
その一つが『鏡面研磨』、もう一つが『サテン仕上』である。それぞれについてもう少し詳しく紹介すると、『鏡面研磨』は通常は粒度#800程度の番手を使って研磨作業を行うが、Zwei Lは#1200以上という細粒で綿密に磨き上げられている。同時に、シャープな印象を維持するため『ザラツ研磨』と呼ばれる高級時計や宝飾品の研磨に使用される下地処理を徹底させて、通常の5倍以上、15工程以上の工程を行ってエッジ部分のダレや鏡面部の歪みを防いでいるのだ。
またもう一つの『サテン仕上』では、研磨時に生じる熱で目が焼けないように細心の注意を払い、ラインの切れ目やカーブのゆがみが出ないように仕上げられている。Zwei Lは製品バリエーションが豊富で、小さなフックから大きなドアハンドルまで製品サイズは様々ある。そのさまざまなサイズ展開でも統一感が失われないよう、サテンの粗さを製品サイズ毎に変えるなど、決して妥協のない、究極の仕上げを追求している。
<Zwei Lの製作工程>
引き抜き: 熟練職人たちが、温度調整にこだわり、部材を作成
↓
カット:後工程の曲げ作業を想像しながら、部材をカット
↓
曲げ:部材を曲げ、製品の形を整えるため、両端をさらにカット
↓
切削:滑らかなカーブに仕上げるため、曲げた際に膨らんだ部分を切削
↓
研磨:鏡面研磨、サテンそれぞれの仕上げにむけ、各15工程以上の作業を実施
↓
検品:専門検品担当者が、サンプルとチェックリストに照らし合わせながら確認
さらに、そのこだわりの上に立ってZwei Lに使われているステンレス鋼(SUS316)は、ステンレスの中でも特に優れた耐食性を誇る。デザイン・仕上だけでなく、素材にまで徹底的にこだわり、末永くラグジュアリーな空間を演出し、安心して使える耐久性を提供している。
●至れり尽くせり。こだわりのJAPAN PREMIUM QUALITY

ではここで、開発担当者の一人である技術設計部 佐久間氏にもう少し詳しくZwei Lの魅力を聞くと、彼女は次のように語っている。
「『美は圧倒的な細部に宿る』 という観点からハンドル、つまみ、ドアハンドル、フック、吊り金具など20品目50点以上の製品をラインアップしていますが、
特筆すべきは製品一点一点の品質の確かさです。デザイン、機能、素材などにこだわり、高品質の理想の製品を生みだしているのです。具体的言うと、引き抜き、カット、曲げ、切断などの製造工程へのこだわりはもとより検査、梱包などにもこだわり、ワンランク上、ひと味違う愛される製品づくりに終始しています。すべてに高級感のある製品を届けるための一里塚を突破しようということですね。妥協を許さない検査基準、さらに梱包形態に至るまでのこだわりは、まさにものづくりスガツネ工業の魂の根源というものですですので、製品をデザインしてから製品化されるまでも、他の製品とはスピード感や求められるレベルがひと味もふた味もちがう。見た目のデザイン性だけでなく、機能性や空間全体とのバランスが合わないと検討テーブルには上がらないし、そのあたりが非常に難しいです。勿論他の製品が劣っているわけではあり
ません。Zwei Lとして製品を生み出す際は、 Zwei Lのブランドに恥じない妥協のないデザインが求められていると感じるんです。」

至れり、つくせりのZwei Lだ。今日も、この瞬間にも研ぎ澄まされた製品に一段と磨きが加わっている。その様子を何度もご覧になっている乃村工藝社の国際的なインテリアデザイナー、小坂竜氏から次のような声をいただいた。「スガツネ工業のものづくりマインドは流石ですね。徹底していますね。伝統あるこだわり製品は私どもにとっても欠かせないんですよ。世界の商業施設や公共施設でも使ってみたいと思える、納得できるんですよ。そう意味で言うと、スガツネ製品は今や国境なき国際品ですね。これからも弾んでください。飛んでくださいです。」
ありがたい言葉だ。まさにスガツネ工業がめざすところだ。すると小坂さんは言葉を加える。
「未だ新型コロナウイルス問題で世の中が混乱している中、スガツネ工業のフラッグシップブランドにこれからも期待したいですね。元気なこの国のものづくりのトップリーダとして、今日も私たちのそばで、輝かしい日常を描いてくれていますよ。私たちの声をどんどん届けていきたいですね。一緒にJAPAN PREMIUM QUALITYを発信していきたいです!」
文 : 坂口 利彦 氏
こだわり人[2020.11.06]
モノの動きをデザインする最先端のこだわり。『モーションデザインテック』/スガツネ工業(東京・千代田区)
新型コロナウイルス問題により生命と経済という観点から、人々の毎日の暮らしやビジネスに大きな変化が表れているいま、あのホンダ自動車の生みの親である本田宗一郎氏の"3つの喜び"が改めて光を浴びている。若い頃に小生も、本田氏の"3つの喜び"という言葉に魅せられ、「製品を創る喜び」「製品を売る喜び」「製品を買う喜び」という3つの喜びに心酔し、製品哲学の原点を学んだものである。
ところで、新型コロナウイルス問題以降の時代の変化を思うと、あのホンダの3つの喜びに再び光が当たり、「製品を創る喜び」の必要性が一段と望まれてきているのである。結局、経済の進歩、発展の原動力は製品に尽きる。このコラム風に言えば、こだわりのあるモノづくりがこれまでも、これからも重要だということだ。スガツネ工業もここに軸足を置いて、創っているものは違っても、動きを創造する最先端のテクノロジー『モーション デザインテック』を重要な事業の柱にしている。モノの開け閉めなどにさらなる付加価値を与える機構として、絶大の信頼を得ている。

そこで今回は今一度、スガツネ工業のこだわりの技術である『モーション デザインテック』の大要はもとより、その中の「ソフトモーション(ゆっくり動く)」に分類される独自のダンパー機構『Lapcon(ラプコン)』に焦点を合わせ、その多彩な魅力を紹介させていただこう。
モノの動きをデザインする最先端のこだわり。『モーションデザインテック』
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)
●企業に求められる3つの喜びに向かって
モノの原理、原則からさまざまな動きをデザインする『モーション デザインテック』はスガツネ工業ならではの独自性のある"動き"の技術である。その意は『モーション(動きを)』『デザイン(創造する)』『テック(テクノロジー)』。現在は5つの動きの中から作業環境にあった動きを選べば扉や蓋の操作性を大幅に向上させ、家具や装置、設備の付加価値を一段とアップさせることができるということで、さまざまな業種から注目を浴びている。
では具体的にどんな動きに着目が集まっているのだろうか。添付のイラストに合わせてご覧いただくとよりわかりやすいだろう。

①ソフトモーション
すーっとゆっくり扉や蓋が動き、安心・安全を提供する。スガツネ独自のダンパー機構であるラプコンが利用された製品も数多く、指挟みなどを防ぎ、扉や蓋のソフトな動きは高級感を演出する。

②フリーストップモーション
摩擦を利用したもので、ストッパーなどを操作することもなく、開閉中の扉や蓋、カバーを任意の位置で止めることができる。

③パワーアシストモーション
バネの反力を利用し、重い扉や蓋やカバーをふわっと、軽々開閉することができる。力の弱い方でも片手で楽々開閉ができ、働く環境のストレスを軽減する。

④クリックモーション
クリック機構を利用し「カチッ」とはまって止まる動きによって、開閉中の扉や蓋、カバーを独特の感触とともに一定の角度で仮保持する。開閉に確かな手ごたえをもたらす。

⑤ユニークモ―ション
クリック機構を利用し「カチッ」とはまって止まる動きによって、開閉中の扉や蓋、カバーを独特の感触とともに一定の角度で仮保持する。開閉に確かな手ごたえをもたらす。
●ものの動きに着目した『ラプコン』。

以上、『モーション デザインテック」の5つの基本的な動きを紹介したが、今回はその中でも①ソフトモーションに分類されるスガツネ工業オリジナルのダンパー機構『Lapcon(ラプコン)』について、その動きの開発に当初から携わっている、スガツネ工業 千葉工場開発課 大嶋氏に話を伺ったのでその大要を紹介させてください。
「ラプコンはLamp Control(ランプ コントロール)を縮めて作った造語であり、ソフト・スムーズ・ショックレスをコンセプトに開発された"動きの総称"を意味しています。重たい扉がバタン!と閉まったら指を挟んだりして危険ですよね。そんな危険を解消するためには究極のところ、扉なんてなければいいんですが、そうもいきません。そこで今から30年以上前に開発に携わっていた私たちが着目したのが粘性体、いわゆるねばっとした液体です。100種類以上のサンプルを用意し、製品ごとに適した調合を行い、試行錯誤の末、ラプコンを開発しました。
ラプコンには、『せん断機構』と『オリフィス機構』の2種類の抵抗を利用した機構があり、製品ごとにどちらかの機構が使われています。この2つの抵抗を利用した機構は、機械設計の世界では100年以上前から当たり前にある事実でしたが、これを具体的に実用化した会社が当時なかった。そこで私どもは、この抵抗の力を使って動きをコントロールすることはできないかということに着目したんです。


オリフィス構造
せん断構造
この抵抗を利用する、といっても当時は一筋縄ではいかなかったそうである。当時のことを大嶋氏はさらに熱く語られる。
「一番苦労したのは、化学と機械工学の"相関関係"です。通常、粘性体の粘度の単位は化学のストークス(St)という単位を使いますが、われわれ部品メーカーでは機械工学のトルク(N・m)という単位を使って開発・製造を行います。ラプコンを開発するにあたり、この化学と機械工学の異なる力の単位を相関させるのに、それはとても苦労しました。当時は今みたいにネットもない時代ですし、簡単に調べて答えを導くこともできません。地道に探り続けるしかありませんでした。
しかも、私たちは芸術作品を創る芸術家ではなく、工業製品を創るメーカーですから、開発に使える時間もお金も限りがある。そんな制約のある中での開発は決して楽ではなかったですし、今でもとても印象に残っていますね」
●スガツネ工業の顔になったこだわりのラプコン。
大嶋氏の当時の苦労に改めて教えられる。「こんな一言では語りつくせん」という苦労が想像できるというものだ。
それでも1988年に待望の製品化に成功。今日のラプコンという、動きを創造する最先端のテクノロジーをこの世に生み出されたのだ。だが、市場に定着するまでに苦労があったそうである。
「製品化できたときは、それはとてもホッとしたのを今でも覚えていますが、すぐに我々の直接のお客様(企業様)からの評価が得られたわけではありませんでした。しかし、その機能や安全性が徐々に国内のみならず世界中に認められるようになると、製品を日々使われるエンドユーザー様側からの視点で市場での価値が高まり「ラプコン=スガツネの技術」と評されるようになりました。開発の人間としては、開発した製品が大量に売れ始め、市場評価が長年変わらないことが何よりの評価だと思っています」

自ら開発にかかわったこともあって、大嶋氏のラプコンの現在、未来について熱い。 「ラプコンは私どもの開発チームとしても、長年愛され、今後も変わらぬ安全性をお客様へご提供できるものとして、大変誇りをもっています。現在に至るまでスガツネ工業の技術の象徴として家具金物・建具金物のみならず、産業機器分野でも日々お客様の課題を解決するためのコアテクノロジーとなっています。既製品の製品数は70種以上。皆様の身近なところで、使う人へより一層の安全とやさしさ、高級感のある優雅な動きを提供し続けています。また、スガツネ工業で培われたノウハウで、数多くの粘性体と機構を組み合わせ、お客様の納得のいく動きを共に追及し、特注製品などのご相談にも対応しています。

動きの開発はまだまだ続いていきます。時代のニーズの変化に合わせて常に改善・改良・先行開発には手を抜きません。利便性を追求すれば、市場は必ず存在します。この"利便性の追求"は開発者がどれだけ感性豊かに、発想力、想像力をもって考えられるかが鍵になっていると思います。スガツネ工業はなにも、ダンパーに力をいれダンパーを開発しているのではなく、"動きをコントロールする、デザインする"という目的に力を入れ、動きに付加価値をもたせた金物によって、皆様の生活を豊かにしていきます。今後生まれる付加価値は、今ある5つの動きだけではないかもしれません。ぜひ今後も期待していただければと思います」
●ここにスガツネ工業のこだわりあり。
この開発者の思いがまさにスガツネ工業のこだわり技術を象徴している。あの本田氏の3つの喜びの製品哲学に改めて教えられるというものだ。
新型コロナウイルス問題などに怯まず、新しい価値観を秘めた企業の存在感、さらには未来観を描いていくには、今こそ微に入り細に入り設計者、利用者、社会の人々に目を光らせ、全身で勇気をもって挑めということだろう。そのための施策としとしてすでにさまざまな展開を講じているが、ものの動きの面から、デザインの面から、さらに空間の面から多彩な製品をWEBサイト『スガツネット』で体系化しているので受け止めやすいのではないだろうか。しかも、この『モーション デザインテック』についていえば、多くのお客様に喜ばれている『選定ツール さスガくん』といったサイトを立ち上げているので是非ご覧いたきただきたい。例えば、設定する扉の動き、質量や重心などを入力するだけで必要トルクを自動計算し、該当するヒンジやステーなどの製品を即座に選定できるので実に効率的で便利である。使い方は初めての方でも簡単だから是非アクセスしていただきたい。付加価値機能を持ったヒンジ、ステー、ガススプリングなどが自由に意のままに安心て使えるということである。
この分野のトップ企業として特注品の要望にもお応えしているので何なりとお声をかけください。機能追加、寸法変更、新規開発にも柔軟に対応することができる。まさに、日常から変わって行く新しい価値観の誕生、未来への誘いだ。
文 : 坂口 利彦 氏
こだわり人[2020.09.01]
これは見逃せないぞ! 時代が呼んだこだわりの 3 大王国。 /スガツネ工業(東京・千代田区)
一つの時代が終わったというのだろうか。新しい時代が始まったというのだろうか。新型コロナウイルス問題の先行きがいまだに見えない中で、人々の毎日の暮らしが随分変わってきている。あんなに"それ行け、やれ行け"という流れに乗って駆け上がってきたのに、随分地核変動が起こってきたというものだ。人々の毎日の暮らしはもとより、ビジネスの世界でも経営者だけでなく従業員の意識や行動にも変化が表れてきていることは周知の通りだ。朝夕の出勤革命やリモートワークの日常化、息を潜めた接待ビジネスの低減など、まさにコロナ大異変ということだろう。
裏を返せば、そうしなければ人間はこの世に生き残れない。企業も、人々の毎日の暮らしもみな吹っ飛んでしまうということだろう。そんな中で、製品の需要動向に詳しいあるマーケターが気になる話をしていた。新型コロナウイルス以降、消費動向に一つの変化が見られるというのだ。
「財布の紐は確かに固くなっているが、固くなっていく一方で、"ここぞ"と思えば消費は拡大しているんです。日曜大工などを扱うホームセンターなどで顕著に表れてきているのですが、これまでの暮らしを見直してこれからの生活を考えると、この際、住まいや店舗などの改善、改築、新装はやむなしという"この際消費"は着実に伸びているんです。」

なるほどだ。言わずもがなのことで、現状の悩みはあるが新型コロナウイルス以降に備えて明日への、次代への行先に明るい展望も描かれているということだろう。そういえば、全国にあるスガツネ工業のショールームや展示会の来場者を見ていると、お目当ての製品を見ていくと同時に、"ついでにあの製品を見てみたい、触れてみたい"というお客様が着実に増えているのだ。"災害に強いとか、安心安全な住まいとか、お客様に親しまれる繁盛店の店づくりのために立ち寄ったが、この際だ、ついでに見ていこう、今一度、あの機能をあの使いやすさ確かめて"ということである。まさに、"この際消費"の生き字引が身近にありだ。その数3万点以上という品揃えを誇るスガツネ工業のこだわり製品は見逃せないというのだ

その人気のショールームで一際注目を浴びているのが『こだわり金物王国』と名付けた『スイッチ・コンセントプレート PXP型(スイッチ・コンセントプレート王国)』と『フック&バスルームアクセサリー PXB型(フック王国、バスルームアクセサリー王国)』である。そのこだわりに徹した製品群に今一度クローズアップというのはいかがだろうか。もちろん、現物をショールームなどでご覧いただくのが一番いいのだが、今回はスガツネ工業のこだわりということで、その大要を紹介させていただこう。
これは見逃せないぞ! 時代が呼んだこだわりの3大王国。
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)
●スイッチ・コンセントプレート PXP型 (スイッチ・コンセントプレート王国)
いま人気の『スイッチ・コンセントプレートPXP型』はこれまでにも再三、そのこだわりコラムで紹介させていただいているが、PXPは高品質を表す『Premium(プレミアム)』のPと満足感を表す『Pleasure(プレジャー)』のPを掛け合わせたイメージ名で、カーテンや壁紙のデザインを選ぶように住宅や店舗の空間に合わせてスイッチやコンセントプレートを気軽に選んでほしい、言葉を変えると、新鮮で細やかな美意識を提案しようというものである。発売から5年、その存在感は着実に浸透しているが、魅力のポイントは大きく分けて4つある。

【1】 多様な品揃えラインアップと、一点一点のお客様好みの品格のあるデザイン性
外国の名のあるブランド品としてスペインの『FEDE』社と共同開発した個性豊かな美しい仕上げのシリーズと、スガツネ工業のフラッグシップブランドの『Zwei L』、さらにスガツネ工業の伝統ブランド名である『LAMP』をラインアップしている。外国製、国産品。まさにインターナショナルなスガツネ工業ならではの多彩な品揃え。まさにスガツネ工業のこだわりここにありということだ。
【2】 ワンランク上の素材の贅沢な仕様。
本スイッチ・コンセントプレートに使われている素材はステンレス鋼、真鍮、樹脂、天然木などなど実に多彩である。本物だけが醸し出す存在感をお楽しみいただける。
【3】 長い経験とノウハウに裏付けられた職人の丹念な作り込みと仕上げの良さ。
研磨や切削加工、プレス、鋳造、射出成形、表面処理など、素材に合わせて隙のない職人の技が素材の魅力を最大限に引き出す。
【4】 画期的な取付方法
取り付けが機能的で簡単、そのほとんどがねじを見せない取付方法でプレートのデザインの見映えもよく、空間に新たな風合いと好印象を与えるということである。
至れり尽くせり。改めてこの製品に対するスガツネ工業の熱い思い入れがわかるというものだ。この製品の開発と普及の指揮をとる仕入部の奥山氏はその多彩な製品力を次のように語っている。 「普段からスイッチやコンセントは皆さん何気なく使っていると思いますが、PXPは毎日の暮らしをより豊かにし、住宅に限らずホテルや店舗など見直して新たな存在感を呼び込もうとするものです。まさに小さなところから始まる美意識の掘り起こし、空間の世界観を実現するための必需品ですよ。」
それでは、スイッチ、コンセントプレートの多彩な製品群、お客様の利用ニーズに合わせてどのようなスタイルの製品を提供してるかをクローズアップしてみたい。
基本的にお客様の多様なニーズに即応できる6つのタイプのスタイルを整えている。『エレガント』『カントリー』『モダン』『オリエンタル』『ナチュラル』『フェミニン』である。それぞれの詳しい特徴や機能はカタログやWEBサイト『スイッチ、コンセントプレート王国』で じっくりご覧いただきたいのだが、以下抜粋して紹介しよう。
☆ モダンではスガツネ工業のフラグシップブランド『Zwei Lシリーズ』をはじめシンプルなデザインが特長で、デザイナーに人気のスタイルである。『カーボンファイバーシリーズ』はレーシングカーにも使われる、軽くて強いメッシュのカーボンファイバーのイメージが喜ばれている。『クールメタルシリーズ』は無駄を削ぎ落したミニマルなデザインと、シャープなデザインでありながら、安全性を兼ね備えたエッジ処理が人気で、ワイドタイプ、ホテルコンセント仕様などラインアップを増やしている。

☆ オリエンタルでは和の美しさを徹底追求した『箔シリーズ』や『UV漆シリーズ』がいずれも豊かな伝統美ということで喜ばれている。しっとりした質感が特に和の住宅や店舗、旅館などで支持されている。

☆ カントリー・フェミニンでは美濃焼で仕上げた『ポータリーシリーズ』やキッチンなどに調和する『ホーローシリーズ』など素材豊かにラインアップされているが、中でも人気なのは天然木を削り出してつくられた『プレミアムウッドシリーズ』である。巷に流通する安価なシート素材ではなく、あくまでも本物志向のスガツネである。

●フック&バスルームアクセサリー PXB型 (フック王国・バスルームアクセサリー王国)
―方、『フック&バスルームアクセサリー PXB型』についてはどうだろう。『スイッチ・コンセントプレート PXP型』と同様に充実したラインアップと個性的なデザインが大きな特長である。一般的にバスルームやサリタニ―のアクセサリーと言えば、直線的で無機質なシルバーのアイテムが多いが、スガツネのPXB型はヴィンテージの味わいを演出するカントリーテイストなフックやタオル掛け、色鮮やかなシリコンゴムのフックなどが魅力である。

バスルームだからとあきらめないで。フック、つまみ、タオル掛けなどを一体化すれば、自分好みの空間を身近に構成できるし、天然木や真鍮、色を生かした素材を使えば、親しく愛着のある空間も容易に得られる。人にやさしい安らぎの空間を金物から創り出すことによって、自らをリフレッシュするバスルームにより付加価値をつけることができるのだ。
その多彩なラインアップは先のPXP型と同じで、スタイル別という観点から『モダン』『エレガント』『カントリー』『カジュアル』といったシリーズを揃えているので、お好みの製品で快適な空間が構成、展開できる。
☆ モダンに代表される『アーバンメタルシリーズ』はシャープさを求め最適な素材としてアルミニウム合金を選択した。押し出し成形によってシャープさを出しつつ、絶妙なR(角をとってまるくする)をつけることで、大事なお召し物やお手回り品が傷つかないよう徹底的に配慮されている。このRは、開発段階で何度も試作を重ね追求した、まさにこだわりの一つである。こちらはフックとタオル掛けを用意。バスルーム全体を引き締め、ワンランク上の空間を創ることができる。

アーバンメタルシリーズ
☆ カントリーに代表される『エイジドシリーズ』はスイッチ・コンセントプレート王国にもあるエイジドキャストと同じ質感で空間をトータルコーディネートすることができる。『エイジドスクリューシリーズ』真鍮鋳物ならではの質感と重厚感に、ヴィンテージ感をプラス。すりわりネジをあしらった独特なデザインはカントリー調の空間にマッチすること間違いなしだ。

☆ ナチュラルではこちらもPXP型にある『プレミアムウッドシリーズ』が人気。まるで壁から木の枝が生え出たようなユニークなデザイン、流行りの異素材(木と金属)の組み合わせ。フックにハンガーなどを引っ掛けたときに直接壁に当たり壁紙を傷つけいないよう、横から見るとV字になっており、使う人のことを考えた、抜かりない配慮がされている。
同じ天然木でも『ウッドシックシリーズ』は木特有の"柔らかさ"をイメージした丸みのある形状とし、より機能重視で鞄やコートなどを掛けやすくしている。


☆ モダンな風合いのある『レザリーシック』は名の通りレザリー(革のような)な見た目でブルックリンスタイルなどの空間にマッチすること間違いなしだ。表面のレザー部分は、試作を重ね亜鉛合金に特殊塗装を施すことで、本物と瓜二つの見た目でありつつ、水や汚れに強い。
このようにスガツネ工業の製品は生活の何気ない部分に存在するが、毎日使うからこそ、ひと味もふた味も違う使い心地、優越感をも提供する。
最後に、先の奥山氏がスガツネ工業のこだわりの原点についてこんな話をしてくれました。「私どもには、ある面ではふたつの顔があります。ひとつは私どもの思いを集約したこだわりの製品であり、もうひとつは私ども製品を購入いただいて、建築家やデザイナーの製作物に組み入れてもらってその製品の価値化を一層高めるものです。どちらもスガツネ工業ならでこだわりを徹底追求していることは当然のことです。どちらにしても、製品に込められたこだわりには変わりありません。空間の完成度を各段に上げる製品をご提供させていただきます。まずは、お気軽に声をかけてください」
文 : 坂口 利彦 氏
こだわり人[2020.05.13]
WEBでお届けする建築建材展・JAPAN SHOP / スガツネ工業(東京・千代田区)
まずは新型コロナウイルスの感染拡大に際し、この度の感染症で亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。また、不運にも感染された皆様にはお見舞い申し上げると共に、1日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。これからも拡大の恐れがあると専門家の皆様から指摘されていますのでくれぐれもご留意ください。
また、医療従事者、各種医療関連従事者の皆様の治療および感染拡大防止に向けたご尽力、ご対応に感謝申し上げます。今や医療崩壊という言葉も飛び交っていますので、ただただよろしくお願いしますということです。
正直、今般の新型コロナウイルス問題は多くの方が指摘されていますが、青天の霹靂ということではではないでしょうか。ボク自身、この言葉を初めて目にしたのは昨年の12月でしたが、マスコミに載って表に出てきてからは、次々に本ウイルスに関連した情報が飛び交い、あっという間に今日のこの情勢です。その結果、当初は2020年の東京オリンピック開催問題と絡めて論じられるぐらいだったのですが、今や全世界共通の課題になり、その終息が急がれているのです。その間、パンデミックとかクラスター、オーバーシュート、ロックアウトといった聞きなれない言葉に驚き、心揺さぶられてきたものです。そして、ここに来ても止まらない感染者拡大に伴い、外出禁止、学校封鎖などが叫ばれ、医療崩壊といった国民第一という命の絆も崩れてきているという実情です。まさに霊感する世界はどこに行くかです。
■こだわり人 ファイル091
WEBでお届けする建築建材展・JAPAN SHOP
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)
そんな中で、新型コロナウイルスの感染予防、感染防止の内向き施策から垣間見える経済の不透明さであり、先行きが見えない不安感です。言葉を変えると、生産、消費、流通といった経済の循環機能が萎縮し、低迷してしまうのではないかという危惧です。当然、ものづくり企業として快適で潤いのある生活の基盤を担う製品を世界中にお届けする私どもスガツネ工業にとっては最重要課題ですが、その流れを身近に受け止めたのが3月3日から4日間、東京ビッグサイトで行われるはずだった日本経済新聞社主催の『建築建材展』『JAPAN SHOP』の開始中止。感染予防、感染防止から開催中止、やむなしという決断です。この間の事情について、スガツネ工業はこう語っています。
「両展示会は店舗、オフィス、住宅、街などの空間デザインに関する製品を中心に総合的に紹介されるソリューション展示会です。私どもはこの展示会の趣旨を踏まえ、従来より多くのお客様と親しく交流してきました。特に3月という時期は4月から始まる新しい年度のオープニング月でもありますので、毎年恒例の展示会としてフレッシュな気分で新製品を身近にご紹介してきましたが、今回の新型コロナウイル問題の発生です。止むなく、世界の動静と足並みを揃えて、開催中止に同調せざるを得なくなりました。

↑社員よりデザイン案公募・投票により決定した周年ロゴ
折から弊社はこの2月におかげ様で創業90周年という晴れの日を迎えて、お客様と歩んだ足跡と、その歴史の延長線上に向かえるこれからの時代の熱い思いを感謝と未来という観点からご紹介させていただこうと準備を進めておりましたが、今日の非常事態を思えば中止は最善の道。とにもかくにも新型コロナウイルス感染拡大防止措置のために、私どももその一翼を担っていかなければの思いです」
やむなく開催中止。その想いを察して余りある。つづけてこんな言葉を付け加えられた。
「ですが、多くのお客様からスガツネ工業のこだわりのある技術には今年も眼が離せません。楽しみにしていますというありがたい声をいただきました。その声は今も続いていますので、僭越ながら昨年同様にこのコラムを通して紹介させていただくことにしました」
ということで、今回の「こだわり人」は少し趣を変え、(90周年という感謝の事業展開は別の機会に譲るとして)、WEBコミュニケーションという観点から、『建築建材展』『JAPAN SHOP』の両展示会で紹介予定だった、最先端のこだわり製品にスポットライトを当てさせていただきました。
【WEB版 建築建材展・JAPAN SHOP 新製品みどころ紹介】

『建築・建材展』『JAPAN SHOP』のスガツネ工業ブースイメージ
1、ラプコン搭載オリンピアスライド丁番360シリ―ズ

スライド丁番の新定番であるオリンピアシリーズ。国内初5段階ダンパー調節機能で、扉サイズにとらわれずにお好みのフィーリングで扉の閉まる速度を調節できる。JIS規格を優に超える社内開閉テストをクリアした抜群の耐久性で、家具の高級感を金物から創り出すことができる。
2、上吊式引戸金物FDシリーズ
扉の開閉方向それぞれにゆっくりと静かに引き込むデュアルソフトクロージング機構付きの上吊式引戸金物。扉を開ける際の操作力を徹底的に追求し、お子様でも、ご高齢者でも開けやすい軽い操作感を実現。住宅向け『FD30EX』から、非住宅(ホテル・店舗・オフィス)に使える『FD35EV』、『FD50-H』、『FD80-H』をご用意している。
3、三次元調整機能付き隠し丁番HES3Dシリーズ

大好評のHES3Dシリーズは、開き扉に通常見られる丁番軸を見せないすっきりとしたデザインながら、30万回の開閉試験(当社基準)をクリアした安心製品。スガツネ独自の7軸構造で枠と扉の堀込が浅く、加工が容易でコストパフォーマンスに優れている。取り付け後に三次元(上下方向、左右方向、前後方向)の微調整も容易なため、施工性にも優れている。
4、ガラスショーケース金物GS-Gシリーズ

物販店舗、美術館、博物館などのガラスショーケース向けに開発された丁番・錠前のシリーズ。
フラットでシャープなデザインにより金物が目立たないため、大切な展示品の価値を損ねない上質なガラスショーケースを創ることができる。小型用から50kg以下対応の大型用までの充実のラインアップで、大小さまざまなショーケースにお使いいただける。
5、家具用コンセントカバー・プレート

店舗什器や家具に使えるコンセントカバー・プレート・マルチタップと、それらに組み込めるコンセント・コネクタなどの内部部品を一挙に取り扱う。
今や公共スペースや商業施設、ホテル、カフェなどありとあらゆるところでサービスの一環としてスマートフォンやタブレットの充電としてコンセントが提供されているが、これからの当たり前に設計者の手間と時間をかけないように、WEBシミュレーションツールも用意。簡単に取付イメージ写真のダウンロードや部品の拾い出しができるようになっている
6、LED照明各種
店舗のディスプレイ什器や棚下、間接照明などに使用するLED照明だが、スガツネ製品は電気工事士の資格なしに結線作業が行える施工性に優れている。また、丸型、角型のダウンライトから、バーライト、テープライトなどその数は多岐に渡り、そのほとんどが完全埋込できる点も特長である。
●共に描き、共に手繰り寄せる次代の輝き
ちょっと想像してみてください。あなたが描く住宅、オフィス、商業施設、公共施設などにスガツネ製品がどのように使われているのでしょうか。また、使っていこうとされているのでしょうか。安全、余裕といった今日的なご要望に実に的確に応えると共に、次代への逞しき礎になるビジョンを描き続けています。
とは言いながらも新コロナウイルスの感染は止まらず、我が国にあっては緊急事態宣言が発せられる情勢になっています。
ことは深刻さを増していくばかりです。先に記しましたようにお見舞い、お祈り、感謝の心で、私達の出来ることを即断、即決、即実行するのみですが、もちろんそこには多様なお客様を筆頭に、ビジネスパートナー、従業員とその家族の安全確保、感染予防、感染拡大防止を最優先するという願いありきです。ひいてはその結果が新型コロナウイルス終息後のスガツネ工業のみならず落ち込んだ世界経済の復興、躍進の一助になっていくのではないでしょうか。
今は耐えて耐えて、創業以来の伝統ある明るいランプの光で、世界中に安心と安全の輝きを!である。
文 : 坂口 利彦 氏
こだわり人[2020.03.19]
伝統から生まれたこだわりが、世界ブランドに / タマノイ酢・東京本部(東京・新宿)
創業90周年。2020年の2月を迎えた我がスガツネ工業である。ありがたい。おかげさまで多くのお客様のご贔屓の賜物である。そんな折にある新聞が創業100年を迎えた企業が日本にどれぐらいあるのかを紹介していたが、ぼく自身、多くの企業の創業記念事業に携わってきたので、やはり気になるというものだ。かつて経済企画庁の長官などを歴任された堺屋太一さんからお聞きしたのだが、そこにあるのはその企業を引っ張る事業者の統率力とその行動を支持する社員の支援力の賜物だと言われたのだ。
納得だ。その間、相次ぐ戦乱の勃発、各地で起こった大震災、昭和大恐慌、バブルの崩壊、石油危機...などなど、明治から大正、昭和、平成、令和といった時代の移り変わりの中に数々の困難な出来事があったが、改めて存続、維持、躍進に務めてこられたことに大拍手だ。
そんな折に、遠方より友ありだ。ボクの故郷、大阪の友人からちょっと気になるメールが送られてきたのである。「大阪の南の、あの伝統な街、堺市に本社を構える食品メーカーのタマノイ酢という企業のこだわりは一見に値する。先頃、創業113年を迎え、キミが我が町のように親しんでいる新宿のセンタービルに東京本部を設けてこだわりのある事業展開をされているのだ。特に社長の播野勤氏は凄い。1991年から社長を引き継いでもうすぐ30年になられるが、全くブレずに、今で言う社員の働き方開拓をどんどん進め、食品の世界に独特のこだわりを見せておられるのだ」

タマノイ酢は大阪にいる頃は母親がいつも使っていたし、堺はものの始まりはなんでも堺の名で、地元産の刃物、お線香、和ざらし・浴衣、和菓子、敷物、自転車などなどを提供してきた所だ。かつては東洋のベニスなんて呼ばれ、日本を代表する一大貿易都市として独特の堺産業、堺文化を育んできている。また、堺はここに来て、仁徳稜古墳が日本最大の前方後円墳ということで世界遺産に認定され、地元に新たな活力をもたらしている。
これを後押しするように先頃始まったNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の第1回では、かつての堺の賑わいのある市井を明智光秀が散策していたが、伝統ある土地にしっかりと腰を降ろすタマノイ酢に魅せられるばかりだ。
そういえば東京都のWEB『カイシャハッケン伝』でもクローズアップされていて、その熱くて真摯な事業力が紹介されていた。これは行かなければ、だ。しかも東京本部のある新宿センタービルは、よく通った大成建設のビルだ。あれやこれや、何かお膳立てが揃っている。ということで、今回のこだわり人は堺に本社を構える113年企業のこだわりに着目。新宿の東京本部を訪ねさせていただいた。
■こだわり人 ファイル090
伝統から生まれたこだわりが、世界ブランドに
タマノイ酢・東京本部(東京・新宿)
●酢の発祥地、堺の伝統を生き永らえて
食品と言えば、何といっても取り扱い品種に加え、素材と製法へのこだわりが生命だと言うことをしばしば耳にして来た。それだけに食品メーカーの一挙手、一挙手に眼が離せないのだが、タマノイ酢はその名もずばり醸造酢、粉末酢をはじめ、各種調味料、レトル食品・菓子健康飲料などの製造、販売を行っておられる。現在の主要製品は、はちみつ黒酢ダイエット、すしのこ、パーポー、穀物酢、米酢、黒酢などだが、いずれも113年という長い歴史から生まれたこだわりの逸品だ。

ご案内いただいた広報部 原田氏(左)と、訪れた東京本部のエントランス(右)
すると、気になるのはやはりタマノイという名前なので、案内くださった広報部の原田さんに伺ってみた。
「酢は酢酸菌の発酵作用を用いて作る発酵調味料ですが、記録に残るものでは紀元前5000年前のバビロニアには酢があったと記されています。日本には400年頃、応神天皇の時代に中国から伝わり、最初に作られたのは堺です。そのため、現在も日本の酢の発祥地は堺と言われていますが、1950年頃の豊臣秀吉の時代に『玉廼井』という商標が使われるようになり、今も私どもがこの名を『タマノイ酢』として使っています」
なるほど、愛着のある伝統のブランド名なのだ。歴史を遡れば、1907年に5つの蔵が集まって『大阪造酢合名会社』を設立し、1963年にタマノ井酢株式会社に商号を変え、1994年にタマノイ酢株式会社に商号を再変更。そして、1996年には大ヒット製品『はちみつ黒酢ダイエット』を発売、2007年には創立100周年記念として堺の本社ビルを竣工、2018年には国際的な食品安全マネジメント規格である『FSSC22000』を取得して今日に至っておられるのだ。

●豊富な酢のラインアップ
ところで酢のもっとも大きな特徴である酸っぱさは酢酸だと言われているが、酢の醸造は原料の穀物や果実からアルコール発酵によって酒を造り、そのアルコールから酢酸菌で酢酸を作るのが一般的な製法だ。ではそのような製法からどんな酢が作られているのかをもう少し具体的に紹介させていただこう。すると、原田さんは『農林水産消費技術センター』の小紙を示されたので、そのまま掲載させていただこう。
- 酢の種類
-
資料:出典【農林水産消費技術センター】
●至れり尽くせり、健康に優しい酢の効用
一口に酢と言っても素材などによって実に多彩だということを改めて教えられる。ちなみにタマノイ酢は基本的に醸造酢を作っておられるのだが、出来上がった酢は私たちにとっていったいどんな役割を果たしてくれるのだろうか。酢の効用といったことをお聞きした。すると、原田さんは次のように紹介されたのである。
「酢の効用は実に多彩です。皆さまも日常的に感じておられると思いますが、その大要を紹介しますと次のような効用があげられます。
- 料理の味をおいしくする
- 酢の酸味は味覚を敏感にするので、酢を加えると肉や魚のうまみが増す。
- 食欲増進や疲労回復に役立つ
- 筋肉や肝臓に蓄えた糖が不足すると疲労感を感じるが、酢は糖を燃焼させる。
- 血圧を抑制し、ダイエット効果がある
- 薄めてレモンやハチミツを加えると飲料水として効果的である。
- 殺菌力があり保存性を高める
- 酢の主成分である酢酸には殺菌力があり、酢漬けやドレッシングなどの副材料になる。
- 食材を柔らかくする
- 酢にはカルシウムを分解する作用があるので、肉などを柔らかくする。
まさに、発酵調味料ならでは至れり尽くせり、私たちの身体に優しいのが大きな特徴です」
改めて酢の多彩な効用に魅せられるばかりだ。酢に対するタマノイ酢のこだわり事業に教えられる。まさに酢と向かい合って113年企業という歴史の積み重ねだ。

播野社長
ここに播野社長の熱いメッセージがある。もう幾度となく拝見させていただいてきたが、社長歴30年のおごりなどもまったくなく、あくまでも腰低く控えめで奥行きがある。
「蔵で脈々と受け継がれてきた独自の酢酸菌から生まれる酢は時代を超えて、私たちの食生活になくてはならない貴重な存在として位置づけられてきました。モノばかりが溢れる時代。私たちはその志しを受け継ぎ、単に価値ある製品としてだけではなく社員、地域社会、消費者になくてはならない存在でありたいと願って止みません。
人と夢が見えにくい時代、私達の原動力は繋がりと可能性です。誰かのために何かができる。誰かと繋がり何かを信じ、求め続けていたい。決して、大層なものを求めているわけではありません。日々のくらしの中で、目の前のことに真摯に向き合っていたい。...多様性の中に埋没して行く個性と普通の暮らし、複雑な社会の中でそれぞれが、それぞれの障害を乗り越え、繋がっている。
一人一人が自分の未来を信じ、たくましく自分の足で立っている。関わる多くの人々みんなが、それぞれの顔で輝きを放っている。日々お互いに、そんな素敵な関係でありたいですね」
●重要な全社員へのこだわり、自立と成長

失礼だが、まさに人間、播野社長の熱い想いが込められている。若い頃に日本生産性本部に出向し、経営コンサルタントの資格を取得されたこともおありだが、その多様で人間的ともいうべき経営スタンスが30年という社長職に留めさせたのだろう。地元、堺の産業経済や食品業界の重鎮として熱い汗を流し続けておられるのだ。
すると、原田さんが酢のこだわりから生み出されてきたタマノイ酢ならではマネジメントへのこだわりにも特筆すべきものがあるので紹介させてください、だ。もちろん異存はない。これまでにマスコミ報道などで、その特異なこだわりを目にしていたので、是非、聞かせてください、だ。
そういえば、播野社長は「伝統から現代、そして未来」という観点から出社したくなるオフィスをスローガンに掲げ、食品の研究開発と社員一人一人の自立と成長の人間育成に徹底的にこだわっておられた、ぞ。
研究開発についてはもっとおいしく健康を目的に、中央研究所を中心に関連する大学や研究機関と一体となってより高いレベルの酢の基礎研究、例えば、黒酢の抗菌化作用やがん予防効果や高血圧予防の促進、さらには食酢原料の研究などを行い、大きな成果を積み重ねてきておられる。
一方、社員の自立と成長についても実に意欲的で、キャリア制度、フューチャー制度、マネージャー型人材育成といった独創的なプログラムがある。

中央研究所外観(左)と、社員ミーティングの様子(右)
「いずれも社長自らの発案で、社員の自立をサポートし成長因子をどんどん伸ばしていってほしいというものです。これこそは社長の、私どもへの親心であると真摯に受け止めています。100周年の本社立て直しの際に知的創造空間と迎賓館というテーマを掲げましたが、そこにあるのは社員一人一人の創造性が大いに発揮され、すべてのお客様を大事にしていこうという私どもの心の現われなんですよ」

知的創造空間に迎賓館その具体的な姿、様子を映像で見せていただいたが、納得だ。社長の熱い想いが企業全体に行き渡り、社員一人一人に浸透していることが随所に読みとることができた。正直、我が故郷の企業が堺に止まらず、首都東京で、いやこの日本で、いやいや世界で食文化の一翼を担っているのが実に感慨深く、ちょっと胸が熱くなったものだ。若者よ、会社と共に成長していきなさいという播野社長の愛のある応援旗を改めて身近にしたということだろうか。
そういえば、タマノイ酢はボクの好きなラグビーの名門、神戸製鋼『コベルコスティーラーズ』のオフィシャルスポンサーとしても著名だし、世界のソムリエ、こだわりの食通、田崎真也さんを酢の監修人として起用されて、そのこだわりのある「繋がり」と「可能性」を追い求めておられる。
今日はこのまま馴染の居酒屋でタマノイ酢を使ったこだわりの地元愛で一杯やっていこう。この高層ビルが立ち並ぶ狭間で播野社長の歴史愛、人間愛を再び思い浮かべながらね。何かタマノイ酢の伝統が距離を越え、時間を越えて一気に近くにやってきたようだ。これはボクの地元愛かもしれない。やっぱりこだわり、ありがとうだ。
文 : 坂口 利彦 氏